原告に受訴裁判所が特別代理人を選任して訴訟追行をさせた珍しいケースがありましたのでご紹介します。


民事訴訟法35条1項は


「法定代理人がない場合又は法定代理人が代理権を行うことができない場合において、未成年者又は成年被後見人に対し訴訟行為をしようとする者は、遅滞のため損害を受けるおそれがあることを疎明して、受訴裁判所の裁判長に特別代理人の選任を申し立てることができる。」


と規定しており、本条の適用範囲は原則として法定代理人のない、または法定代理権の行使のできない未成年者などを相手として訴訟行為をする場合に限定されています。


つまり、特別代理人が選任されるのはいつも被告側なのです。


今回、未成年の娘さんがその父親に対してとある事情から損害賠償請求をしようという訴えがあり(母親はすでに死去)、この場合、民訴法の規定によって娘に特別代理人を選任することが可能かどうかが問題となりました。


この場合、娘の行為は民法826条の利益相反行為にあたり、


(民法826条 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。)


本来ならば家庭裁判所に特別代理人の選任の請求を求め、この選任決定を得てこの特別代理人相手に訴えを起こすことになります。


しかし、判例によれば、その選任を待っていては損害が生じるおそれのある場合には、民訴上の特別代理人を選任することを積極に解しているようです。

このケースの場合、父親が民法826条に従った特別代理人選任請求する期待はなく(訴えられる側ですからね)、未成年者の保護をしようという観点から認められるのでしょうね。


とはいえ、特別代理人選任の請求について訴訟能力がない未成年者が適当なのか、疑問があるところです(消極説はこれを論拠とするようです)。