異常事態、司法ファッショ…判事が判決で批判(2010年6月17日17時27分 読売新聞)

昨今急増する過払金返還訴訟でいわゆるみなし弁済規定を否定して返還を認める判決が多い流れに、となる地裁裁判官が、その担当した事件の判決理由中で「異常事態」「司法ファッショ」などと批判していたようです。

社会的に注目される事件について、以前から判決理由中に裁判所の私見が盛り込まれることはしばしばありましたが、これは事実認定に基づいて法令を適用し、結論を導きだす(原告の訴えが適当か否か)といった純然たる判決の役割からすれば、結論を導きだすのにはまったく必要のない蛇足です。

こういった私見は、当事者からの不服申立ての対象ではない(当事者はこういった意見はけしからんと控訴するとはできません)ので、上訴審において取り消されることがありません。

ゆえに、このような蛇足が時として当事者を苦しめるものになると批判されている元裁判官もいらっしゃいます。

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(この方は、時として極論すぎるきらいがありますが)


とはいえ我が国では、地裁→高裁→最高裁という三審制をとっていることから、上級審が下級裁の判断の統一を図るために、あえて下級裁判決に注文をつけるといったことはあるんでしょうけれど、

原則として、一裁判官は、担当する個別具体的な事件について判断するわけですから、その事件を解決するためだけの理由書きに心血を注ぐべきで、よそはよそ、うちはうち、との態度を連ねるべきではないかと思います。


ところで、この判決は3月にあったようです。
事件記録を閲覧したのか、当事者からリークがあったのか、今更、掘り起こして面白おかしく記事を書き立てるのもどうかと思いますね。