裁判所へ当事者から提出される書面には,作成者の氏名,名称が記載されて押印がされています。

株式会社の場合,「○○商事株式会社」とあって,続けて,その代表者が誰かということで「代表者代表取締役 △△△△」,清算会社であれば,「代表者清算人 ××××」と大概は記載されているのですが,この間,書面を見ていたところ,「代表者監査役 ◎◎◎◎」というのを見かけました。


はて,監査役が株式会社の代表者になる場合があるのでしょうか。


株式会社がある訴訟行為,たとえば,訴えを提起しようとする場合には,原則として代表機関である代表取締役がこれを行うことになりますが(民訴法37条,会社法349条1項),取締役と会社間の訴えについてはこの限りではありません(会社法386条)。


取締役と会社間の訴えについて,会社を代表するのは誰なのでしょう。


監査役設置会社の場合(会社法386条)には監査役が,監査役非設置会社の場合(会社法353条)の場合には代表取締役又は株主総会で代表者と定めた者,このうち,取締役会設置会社の場合(会社法364条)には代表取締役又は株主総会・取締役会で代表者と定めた者がそれぞれ代表者となります。


ですから,先の株式会社の代表者が監査役であったのは,この株式会社が監査役設置会社であったわけですね。


では,当該株式会社が監査役設置会社どうかはどのように確認すればいいのでしょうか。


裁判所に訴えを起こす場合には,民訴規則18条・15条により,代表者の資格もしくは訴訟行為をするについての必要な授権は商業登記簿謄本等の書面で証明しなければなりません。


商業登記簿謄本には「監査役設置会社に関する事項」という項目があるので,この登記がなされていれば,一見すると386条にいう監査役設置会社と思えます。


監査役設置会社というのは会計監査権限しかない監査役を含まない(会社法2条9号)ところ,登記事項としての監査役設置会社は会計監査権限しかない監査役を含む(911条3項17号)ので,商業登記簿謄本を見たかぎりでは監査役設置会社かどうかはわかりません。


それでは,どのようにして監査役の権限を確認すればよいのでしょうか。


監査役会設置会社や会計監査人設置会社に当たれば,権限の制限はありません(会社法389条1項)。

また,委員会設置会社は,会計監査人設置会社でなければならない(会社法327条5項)ため,権限の制約がありません。

これらの事項が登記されていれば,監査役設置会社ということになり,監査役が代表者になると言えます。


ひとつ勉強になりました。