朝鮮総連:競売訴訟 総連本部、差し押さえ可能 最高裁「資産認定確定すれば」
(毎日新聞 2010年6月30日 東京朝刊)


これまで,権利能力なき社団(※1)それ自体が不動産の登記名義人となることができないことから(最高裁昭和45年(オ)第232号同47年6月2日第二小法廷判決※2),第三者名義で登記されている権利能力なき社団の構成員全員の総有(※3)に属する不動産に対する強制執行について,権利能力なき社団を債務者とする金銭債権を表示した債務名義によって強制執行ができるかについては疑義があるところでしたが,本判決は,このような場合,債務名義の正本のほか,当該不動産が当該社団の構成員全員の総有に属することを確認する旨の確定判決又はこれに準ずる書面(※4)を添付して,当該不動産に対し,当該社団を債務者とする強制執行の申立てをすることができると解するのが相当であり,上記第三者を債務者として執行文の付与を求めることはできないと判断しました。

疑問点がひとつ。
第三者名義の不動産が社団の構成員全員の総有に属することを証する書面が提出されて、強制執行が開始された場合に、この第三者を債務者とする債務名義を有する債権者はその執行手続きの配当手続きに参加することができるのでしょうか。
形式的に債務名義の債務者と不動産名義人とが符合してさえすれば執行できる一方で、社団に属する不動産であることを証する書面が提出されていることからどのように判断すればよいのでしょうか。


※1 実質的に社団としての実態を備えてはいるが,法人格を持たないものをいう。
法人格は法がその構成やその社会的機能を判断したうえで与えるもの。

※2 権利能力なき社団の資産としての不動産については,社団の代表者が,社団の構成員全員の受託者たる地位において,個人の名義で所有権の登記をすることできるにすぎないと判断された。

※3 共同所有の一態様をいい,各共同所有者は目的物の上に独立の権利を有せず,共同体の一員として目的物の管理に参加し,目的物の利用権限を有するにとどまる。
持分権を持たず,分割請求権を持たない。

※4 本判決において、具体例として,権利能力のない社団及び登記名義人との関係で,それぞれを名宛人とする確定した確認判決や判決理由中の判断,和解調書,当該不動産が権利能力のない社団の構成員の総有に属することを記載した公正証書,登記名義人を構成員の特定の者とすることを定めた規約などが考えられるとの補足意見がある。

なお,補足意見は加えて,登記名義人と権利能力なき社団との関係性を文書によって直ちに明らかにならない場合には,当該社団において登記名義人となるべき立場にある者は,自ら登記名義への移転登記手続を求めることができるので,執行債権者は当該社団に代位して,登記名義人たることとされる名義人への移転登記手続を請求して,その移転登記手続を経たうえで,執行することになるのが望ましいという。
保全手続をする場合には,この例によって債権者代位権に基づく処分禁止の仮処分を行うことになろうともいう。