裁判員裁判:保釈許可率7割超に 「運用改善」と評価
毎日新聞 2010年6月18日 11時11分(最終更新 6月18日 11時36分)

記事は、公判前整理手続の導入により、争点が明確化や証拠の整理が行われた結果、保釈が許される率が高まっている一方で、殺人などの重大事件については証拠隠滅や逃亡のおそれなどからなかなか保釈が認められないと伝えています。


記事によると、保釈は何時も裁判所の裁量に委ねられているかのように思えますが、法文上、保釈は請求を受けたら原則としてこれを許さなければなりません(刑事訴訟法89条本文)。



なぜなら、第一審の有罪判決があるまでは、被告人には無罪の推定があるからです。
ゆえに、有罪判決を受けると無罪の推定がなくなるので、このときには保釈の許否は裁判所の自由裁量に委ねられます(刑事訴訟法344条)。


ただ、例外的に刑事訴訟法89条1ないし6号に定められた場合に当たるときは、裁判所は自由裁量によって保釈の許否を決めてもよいことになっています。



さきほど殺人などの重大事件は証拠隠滅や逃亡のおそれなどから保釈が認められないとありました。

たしかにこれらの理由はさきの89条に定められた場合に含まれています(逃亡のおそれありと規定しているものは見当たりません。強いて言えば、「被告人の氏名又は住居が分からないとき」のことを言っているのでしょう。たぶん、勾留の要件とごっちゃになっていると思われます。)が、仮にこれらがないとしても、89条はほかにも「被告人が死刑、無期、若しくは短期1年以上の自由刑に当たる罪を犯したものであるとき」と定めて、裁判所の自由裁量に委ねられています。


また、事件の性質により「被告人が、被害者その他事件の関係者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え、又はこれらの者を畏怖させる行為をするおそれがあるとき」にも裁判所の自由裁量に委ねられます。


そもそも、被告人を拘束する裁判、「勾留」(新聞、テレビなどでは「拘置」と表現します。)するというのは、被告人の出頭を確保し、証拠隠滅を防ぐという目的のほかに、有罪判決を受けた際にはその刑の執行を確保するという目的があります。


ゆえに、重大事件の場合にはさきの89条の要件にも当てはまりますし、勾留の目的を考えるとなかなか保釈を認めるのは難しいと判断されがちなのです。



もっとも、保釈は保釈保証金といういわゆる担保をとって、正当な理由なく出頭しない場合にはこれを没収するという心理的圧迫をかけて出頭を確保しようとするものなので、重大事件ならそれに見合った額を積ませて目的を全うすればいいじゃないかとも考えられます。

実際にはいろいろな諸条件を複合的に勘案して決めることなので、単に証拠隠滅のおそれがあるからという理由だけで保釈を認めないというわけではないのです。
異常事態、司法ファッショ…判事が判決で批判(2010年6月17日17時27分 読売新聞)

昨今急増する過払金返還訴訟でいわゆるみなし弁済規定を否定して返還を認める判決が多い流れに、となる地裁裁判官が、その担当した事件の判決理由中で「異常事態」「司法ファッショ」などと批判していたようです。

社会的に注目される事件について、以前から判決理由中に裁判所の私見が盛り込まれることはしばしばありましたが、これは事実認定に基づいて法令を適用し、結論を導きだす(原告の訴えが適当か否か)といった純然たる判決の役割からすれば、結論を導きだすのにはまったく必要のない蛇足です。

こういった私見は、当事者からの不服申立ての対象ではない(当事者はこういった意見はけしからんと控訴するとはできません)ので、上訴審において取り消されることがありません。

ゆえに、このような蛇足が時として当事者を苦しめるものになると批判されている元裁判官もいらっしゃいます。

司法のしゃべりすぎ (新潮新書)/井上 薫

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(この方は、時として極論すぎるきらいがありますが)


とはいえ我が国では、地裁→高裁→最高裁という三審制をとっていることから、上級審が下級裁の判断の統一を図るために、あえて下級裁判決に注文をつけるといったことはあるんでしょうけれど、

原則として、一裁判官は、担当する個別具体的な事件について判断するわけですから、その事件を解決するためだけの理由書きに心血を注ぐべきで、よそはよそ、うちはうち、との態度を連ねるべきではないかと思います。


ところで、この判決は3月にあったようです。
事件記録を閲覧したのか、当事者からリークがあったのか、今更、掘り起こして面白おかしく記事を書き立てるのもどうかと思いますね。


近年、裁判員裁判のスタートによる裁判への関心の高まりもあって、裁判傍聴がちょっとした流行らしいですね。


裁判をネタもとにした芸人さんもいらっしゃるとか。

また、書籍を出版されている方もいらっしゃいます。



私は結構人の目を気にするたちで、一般の方がどのように裁判を、裁判所を見ているのかが気になり、書店でその手の本を見かけては、手にとって目を通すようにしています。

なかなか組織の中にいると、組織の形なりを客観視できないものです。



だいぶ前の出版になりますが、「裁判官の爆笑お言葉集」という本を手にとってみました。



「おっ」と思わせるタイトルなので、読まれた方も多いのではないでしょうか。

裁判官の爆笑お言葉集 (幻冬舎新書)/長嶺 超輝

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著者が法廷傍聴のした際、法廷内での裁判官の発言で特に印象に残ったものを綴ったもので、なかなかするどい分析や著者のユーモアまじりのツッコミもあって、読まれると裁判所、裁判官が身近に感じられるのではないかと思います。



この本のコラムの中で、裁判官が法廷で自分の考えを述べるときに、「私」でも「本官」でもなく、なぜか建物の名前である「裁判所」を使うのに違和感を覚えるというものがありました。



たしかに

書記官として法廷で立ち会っていると、裁判官は



「裁判所としてはそう考えます」

「裁判所は差し支えます」



などなど、主語を「裁判所」として使いますね。



著者いわく、

これは司法を担う者として客観的に「法の声」を代弁するために自己演出しているのではないか。




このように裁判官が自らを「裁判所」と言うには理由があります。

単に「裁判所」と言った場合、三つの意味がそこには含まれているのです。




一つは、官署としての「裁判所」という意味。


これはイメージしやすいと思いますが、建物・施設としての「裁判所」の意味です。

「裁判所へ行ってきまーす」っていうところの意味ですね。



二つ目に、国法上の「裁判所」という意味もあります。

これは国家機関としての「裁判所」という意味があります。



三つ目に、訴訟法上の「裁判所」という意味があります。

これは、個別・具体的な訴訟事件(裁判と思っていただいて結構です)について判断する、裁判官から構成される「裁判体」のことを言い、1人であったり(単独)、3人であったり(合議)、ときには15人だったりするわけです。


先の裁判官が自分のことを「裁判所」と呼ぶのは三つ目の意味で言っている訳です。



ところで、著者の経歴を読ませていただくと、過去に弁護士を目指して司法試験勉強を経験されているとか。

「裁判所」の三つの意味というのは、法学を嗜むものとしては、イロハのイと言ってもいいような・・・。

何事も基本が大事だと思いますよ。小難しい議論を勉強する前に。

ちょっと脱線してしました。



とはいえ、やはり一般の方からすると違和感のある言い方ですね。
これまでドコモさんのケータイ(携帯)を使っていたのですが、新しいモノ好きの私は結構な額の勉強料(解約違約金)を支払ってソフトバンクさんに乗り換えました。


普段からさわっていていろいろと愉しいiphoneですが、仕事上でもなにかと重宝しています。


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魅力的なアプリの中で使っているのが、「郵便番号検索」(Masayuki Nii)、「ITJ六法」(akipon)。

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「郵便番号検索」はその名のごとく郵便番号から住所を、または住所から郵便番号を検索できるアプリです。


裁判所書記官の重要な職務として、裁判文書の内容を当事者に了知させる「送達」と呼ばれるものがありますが、通常、書留(「特別送達」と呼ばれています)郵便で行います。


ゆえに毎日数多くの郵便物を作成しているので、宛名書きに役立てています。


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「ITJ六法」は基本六法(憲法、民法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法、商法、会社法)を収録したアプリです。


毎年、裁判所書記官はおおむね次の2冊のいずれかから六法の貸与を受けています。

有斐閣判例六法Professional 平成22年版/青山 善充

¥5,460
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模範六法2010 平成22年版/判例六法編修委員会

¥5,670
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このアプリは基本六法に限られてしまいますが、気軽に六法を持ち出せるのが革新的です。



また、条文検索や

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キーワード検索がすることができ、

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ものの数秒で該当の条文にあたることができるので、重宝しています。


これが無料。使わない手はありません。

書記官としては関連法の人事訴訟法、民事執行法、民事保全法、破産法、民事再生法、少年法などなども充実させてもらえるとさらにうれしいのですが、無料なので贅沢は言えません。





iphoneのメールでは、添付されたさまざまなファイルが閲覧可能です。


もちろん、PDFファイルも。



この機能を生かして、仕事場や家にたまった資料の山をiphoneに詰め込んで、持ち出せるようにしました。


資料をスキャナーでPDFファイルとして読み込み、これを自分のgmailあてに送ります。


iphoneでgmailを受信できるように設定して、添付ファイル付きのメールを受信する訳ですが、iphoneの受信方式はimap式が選択できるので、iphoneで受信してもgmailのサーバー上にはデータが残ります。

gmailのサーバーは7GBまでただで使えるので、かなりのデータ量をサーバー下に保存しておくことができます。

また、gmailを選ぶのは、gmailならば、あらかじめウェブ上で指定しておいた条件にしたがったメッセージの振り分けを行うことができ(これまでのように単純なフォルダに仕分けするわけではありません。ひとつのメールが複数の条件に仕分けすることもできます。)、iphoneで受信するだけでルールに沿った分類がされるので、閲覧する便宜がよいのです。


iphoneで取り込んだPDFファイルを閲覧しているところ。

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簡単に拡大縮小、スライドができるので閲覧に難儀することはありません。




そして、件名欄に書類のタイトルや内容、キーワードなどをつけておけば、メール内で検索もできます。

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ちなみに、メールアプリを立ち上げていなくても、iphoneには「spotlight」という機能があり、iphone内すべてのデータから目的のものを検索することが可能です。



これで書類の山からを廃棄して部屋のスペースを効率的に使えますし、ドッジファイルにインデックスをつけて整理する苦労、とっさの書類探しに四苦八苦することから解放されますね。

総務省の集計によれば、「定額給付金」は先月末までに対象世帯の86%への支給を終えたようですが、依然として自治体によっては支給率が半分にも満たないところもあるようですし、申請書自体返送されてしまうことが多々あるようです。


定額給付金、86%の世帯に支給済み、47万世帯に申請書届かず


そんな中、先日、定額給付金の差押えを認める高裁の抗告審がありました。


定額給付金は別居中の妻が仮差し押さえ可能、逆転判決


家裁と高裁で判断が異なりました。

家裁では定額給付金は公的年金や生活保護費などと同様に差押えが禁止されている債権と判断したようですが、差押えが禁じられている根拠がないと差押えを認めたようです。


私見ですが、定額給付金の目的が住民への生活支援を行うことによって地域の経済対策に資するものだとすると、給付権利者たる世帯主という特定の債権者に直接支払われることを要する差押禁止債権ではないのかなあと考えていたのですが、一書記官の考えなど及ばないですね。


決定原文が手元にないので手に入り次第高裁決定についてよくよく目を通そうと思っています。


・・・ところで記事によれば、申立代理人は世帯主が配偶者やその子の給付金を独占するのはおかしいと発言しているようですが、これは事業概要をもう少し検討してみないことにはなんとも言えないのではないでしょうか。

以前にもブログでふれましたが、この事業において世帯構成員は世帯主が受ける支給額の算定根拠になるだけであって個々が独立の給付請求権を持っているわけではないと総務省は考えておられるようです。

これは支給側からすれば一時に莫大な数の支給手続きをこなさなければならないことから迅速に処理するためにはある程度画一的にならざるを得ないからでしょう。

個々に特別事情を聞いて処理するには時間も人も足りないというのをある程度理解しないといけないのではないでしょうか。

とはいえ、もらう側としてはなんで?と思うのは至極当然とも思います。